大分大学小児科学講座では、海外・国内留学を行い、幅広い知見をもった医局員育成に積極的に取り組んでいます。
僕は、前教授の泉先生と小児循環器担当の川野達也先生のご厚意により、東京女子医科大学と榊原記念病院の循環器小児科に研修に行きました。家賃の高い新宿に住んで、車のない電車生活と生活そのものも全く違うものでした。
大分では小児の心臓の手術をしておらず、福岡の病院に依頼しているので、大分内で小児循環器に接する機会は多くありません。なので集中して勉強をしようとしたら、県外に出ることになります。
両病院は、小児循環器、先天性心疾患の分野ではとても歴史があり、全国的にも有名な研修病院です。しかも、循環器小児科、心臓外科、循環器内科という小児から成人までの循環器系が1ユニットを作って診療しており、他の小児分野とは独立していて、“小児科”というより“循環器科”です。
日常も、先天性心疾患の児や長期フォローされた成人の心臓カテーテル検査、カテ治療、新生児も含めた心臓手術前後の管理、不整脈に対するカテーテルアブレーションと、循環器内科的な業務でした。循環器だけをどっぷりできる環境というのは、何でもみないといけない地域の小児科ではなかなかできません
医師10年目を超えて研修に行ったのですが、初めてづくしで、一から勉強しなおしました。全国から研修生が来ており、他の地域のことも聞いたりして刺激になりました。重症も多く大変なことばかりでしたが、大分では経験できないことを経験することができました。
小児科医としては、循環器の知識は役に立つことが多いと思います。新生児心雑音、呼吸障害の鑑別、ショック、失神の鑑別、川崎病、学校心臓検診、さまざまな全身性疾患に伴う心機能評価と、循環器の知識を求められることは多いです。
また、赤ちゃんから小児、思春期、近年は手術成績が上がって成人になる先天性心疾患の方も多く、その人の妊娠出産など成人期まで関わることができ、女子医大では“発達心臓病学”といいます。
また、川崎病、検診など日常診療から新生児重症心疾患、心筋炎、心筋症、不整脈など重症、集中治療まで重症度もさまざまで、非常に幅、奥の広い分野です。近年、新生児重症心疾患を胎児のうちにスクリーニングし安全な出産管理を行う目的で、胎児心エコーが普及してきており、産科と協力して小児科医(小児循環器科医)が胎児期から関わることもあります。
僕も、手術のできない大分でこそ胎児心エコ―を普及させたいと考えており、大分に戻ってきた今も勉強しながら模索しています。
未来を担う子供達のために、そして自分の臨床力(または研究力)を上げるために、留学、小児循環器(発達心臓病学)をおすすめします。大分の小児科に入れば、小児科医としてのジェネラルな知識を身につけられ、そこから核となる分野(できれば小児循環器に!)を集中して学ぶことができます。
僕もまだまだ勉強中ですし、ぜひ一緒に勉強していきましょう!
井戸の中の蛙は、決して大海があることを知らないわけではありません。
井戸の中は、それなりにやることも多くて忙しいのです。私は後輩に肩車してもらい、あるいは先輩にうんしょと引き上げてもらい、たまたま井戸の外に出ることのできた運のいいカエルです。
大分県という井戸を出て、広い世界を見聞きしておいで、勉強しておいで、と送り出されたカエルです。
昨年、東京都にある心身障害児総合医療療育センターという病院に、国内留学させていただきました。研究ではなく臨床を主として、重症心身障害児(者)を含む障害児医療を勉強するためです。
日本の中心では、どのような障害児医療を行っているのか。
同じ時代に生きていながら、地域によって受けることができる医療や福祉にどれほどの差があるのか。最先端医療とは一線も二線も画すこの分野で、いったい何がスタンダードなのか。
そのような疑問をずっと抱きながら、一年間、脳性麻痺をはじめ重度障害をもつお子さん~成人の呼吸管理やリハビリテーション、在宅医療について現場で学びました。
就学前のお子さんの集中リハビリ病棟を担当し、日夜ご両親と話し合い、生活に密着した医療の大切さを知りました。
また週末ごとに研究会や勉強会に参加し、自閉症スペクトラムやAD/HD等について学ぶ機会がたくさんありました。
ところで、障害(といういい方は嫌ですが)をもつ人の医療って、何科の授業で習いましたか?教科書で読んだことはありますか?
実は、年々少子化が進むこの国で、高度な新生児医療が提供できる環境だからこそ、脳性麻痺を始めとした生きることに何らかの困難を持つ子どもたちは増え続けているのです。
私も小児科医になって初めて、この分野があること、それを支える重要性を知りました。
医者になってはみたものの、世の中知らない病気ばかり。勉強しても勉強しても、知るべきことは底をつきません。
でもそれって、素晴らしいことだと思いませんか。
「井の中の蛙大海を知らず」には、後世の人が付け足した「されど天の高きを知る」
「空の青きを知る」という続きがあります。どんなに広く浅く知識を身に着けたとしても、地域の患者さんに還元できねば自己満足で終わってしまいます。
どこにいようとも、やるべきことの本質は変わらないのです。
大分大学の医局は、多くの人たちに等しく大海を知るチャンスをくれます。
医局の先生方が気持ちよく私を送り出してくださったように、私もこれから旅立つ人たちを全力でサポートしたいと思います。
たくさんの仲間で、ますます大きく豊かな井戸になることを願っています。
突然の言葉でした。小児科臨床医を9年続け、小児科専門医、小児神経専門医を取得し、これからバリバリ臨床をしよう、
そう思っていた矢先でした。迷いました。臨床は好きでしたし、3歳の娘と妻がいて、結婚式と車のローンがやっと終わったところで、お金もありませんでした。
しかし、妻と娘、3人の大先輩に後押しされ、大分県独自の研修サポートシステムの援助を受け、なんとか世界に飛び出すことができました。
人口5000人弱の田舎町出身の私を、人口250万人の大都会が待っていました。
英語もろくに話せず、大学院にも行ってない私にとって、海外でいきなりの研究生活は苦労の連続でしたが、行ってよかったです。
何がよかったかというと、
・ 臨床につながる研究にどっぷり浸れた
・ 世界とつながれた
・ 世界でがんばっている日本人に出会えた
・ 世界最高峰のてんかん医療を学べた
・ 大分でできることを考えた
・ 我が家が初めて1つになれた
苦労はのど元すぎれば忘れますが、経験は私の財産となって残りました。
留学とはあまり関係ないですが、私の小児科医生活11年を振り返って、結局、今の自分を支えてくれているのは、そのとき、目の前にいらっしゃった方々との繋がりでした。
山口に帰るか、大分に残るか、小児科医になるか、内科医になるか、迷っている私を
さしでお寿司に連れて行ってくれたのが、当時の病棟医の秋吉先生でした。
神経が大嫌いだった私に小児神経の醍醐味を教えてくれて小児神経の道に引きずり込んでくれたのが一番最初のオーベン犬塚先生でした。
神経を志したものの、逃げ出したくなるくらい鍛えに鍛えてくれたのが当時小児科教授の泉先生で、トロントに送り出してくれたのも泉先生でした。
トロントでてんかんモニタリングユニットのチーフ大坪先生に出会いました。
ミミズのような脳波から脳内の神経ネットワークをつむぎ、あぶり出し、そしてそれをぶったぎる、繊細で豪快な先生です。
口癖は”Top Heavy!!”でした。
何でも一番大切なものから初めなさい、言いなさい、書きなさい。
そんな多くの先生方や仲間とともに、現在、大分で小児神経を盛り上げ、世界に発信していける仕事をしようと奮闘中です。
私は今、皆さんの目の前にいます。皆さんの思いや夢を形作ったり、新しい道を一緒に模索したり、そんなお手伝いができればと思っています。
研究留学や臨床留学に興味のあるかたにフレッシュな情報をお伝えすることもできます。
大分でできることはいっぱいありますし、大分でしかできないこともあります。
一緒にできることを考えてみませんか?
留学先 | 分野 | 医師 |
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University Hospital Leuven | Department of Neonatology | 前田 知己 |
The Hospital for Sick Children, Sick Kids | Division of Neurology | 岡成 和夫 |
Johns Hopkins University | Division of Neuropathology | 宮原 弘明 |
留学先 | 分野 | 医師 |
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東京都立小児総合医療センター | 内分泌代謝科 | 糸永 知代 |
国立成育医療センター | 救急、内分泌 | 久我 修二、穐吉 真之介 |
国立精神・神経医療研究センター | 神経 | 福島 直喜 |
国立病院機構 八雲病院 | 神経 | 秋吉 健介 |
心身障害児総合医療療育センター | 神経 | 松塚 敦子 |
東京小児療育病院 | 神経 | 松田 光展 |
新潟大学 脳研究所病理分野 | 神経病理 | 宮原 弘明 |
久留米大学小児科 | 血液 | 末延 聡一 |
岡山大学 小児神経科 | 血液腫瘍 | 犬塚 幹 |
熊本大学 発生医学研究センター | 血液腫瘍 | 末延 聡一 |
国立病院機構 九州がんセンター | 血液腫瘍 | 秋吉 健介 |
東京大学医科学研究所 細胞移植科 | 血液腫瘍 | 末延 聡一 |
三重大学 小児科 | 血液腫瘍 | 山田 博 |
九州大学小児科 | 血液腫瘍 | 後藤 洋徳 |
国立研究開発法人国立がんセンター中央病院 | 小児腫瘍 | 園田 知子 |
愛知県がんセンター研究所 遺伝子医療研究部 | 癌 | 垣内 辰雄 |
長野県立こども病院 総合周産母子センター | 新生児 | 関口 和人 |
京都大学 免疫細胞生物学 | 免疫アレルギー | 是松 聖悟、長倉 智和 |
さかきばら記念病院 | 小児循環器 | 武口 真広 |
国立循環器病センター | 循環器 | 山田 克彦 |
東京女子医科大学 心臓病センター | 循環器 | 武口 真広、川野 達也、 園田 幸司 |
福岡市立こども病院腎疾患科 | 腎臓 | 清田 今日子 |